日本女性財団

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2020.12.04
女性たちへ贈る言葉 vol.2 森田 敦子さん(植物療法士)
信念を持っていれば、強くいられる

性差による年収格差やDV、虐待、介護といった、これまでも存在した「女性ならでは」の息苦しさや生きづらさを、より浮き彫りにした今回のコロナ禍。本稿は、毎日の生活に不安を抱えながらも、今を懸命に生きる女性に向け、さまざまな言葉をお届けするリレーコラムです。前回登場いただいた作詞家の吉元由美さんからのバトンを繋ぐのは、日本の植物療法の第一人者として活躍する森田敦子さんです。

森田 敦子さん(植物療法士)
森田 敦子さん(植物療法士)
愛知県生まれ。大学卒業後、念願の航空会社に就職するも、直後に大病を患い、長い入院と闘病生活を送る。航空会社退職後は、フランス国立パリ13大学へ留学。植物薬理学を専攻するなかで性科学と出会い、日本で植物療法に基づいた化粧品やデリケートゾーンケア商品の研究・製造・販売を行なう会社を設立。日本で唯一のAMPP認定・植物療法専門校「ルボア フィトテラピースクール」主宰。著書多数。

20代で大病を経験し、植物薬理学を学ぶため留学を決める

―――今では、日本の植物療法の第一人者として知られ、化粧品会社の代表も務められている森田さん。大学卒業後に就職されたのも大手航空会社の客室乗務員ということで、まさに働く女性の憧れを体現されてきた印象ですが、辛いご経験も多かったとか?

大学時代に中国語を専攻していたこともあって、当時、中国路線強化を計画していた航空会社に、念願の客室乗務員として就職することができました。ちょうどそのときはバブル真っただ中で、仕事もプライベートも充実していました。ところが、数年後に突然、重度のダストアレルギー性気管支喘息を発症してしまい、これが人生の大きな転期となりました。

喘息発作で自発呼吸できなくなり、8ヵ月も入院することに。入院中は人工呼吸器にずっと繋がれたまま、薬の副作用で髪もまつ毛も眉毛も抜けて1本もない状態でしたね。肌もただれて、今より20キロ以上も太ってしまい、まるで象さんのようでした。なにより、病気のせいで、将来子どもを産むのは難しいと言われたのが辛かったです。精神的にも不安定になり、とても厳しい毎日でした。

当時、流行っていた言葉でいうと「負け組」でした。医療に命を救われましたが、気管支拡張剤とステロイドがないと生きられない。退院してからも髪の毛は生えず、10年間はカツラをかぶって生活していました。仕事は月に10日働けばいいということで復帰させてもらいましたが、肌はただれて象のように太った私に、まわりの目は冷たかったです。結果、会社を辞めました。それからは、どうにかして元の体を取り戻すべく、植物薬理学を学べるフランスのパリ13大学へ留学することにしました。

衝撃だったパリの性科学。日本で膣の話はタブーだった20年前

―――日本にはない「性科学」の概念をパリで学ばれたことが、デリケートゾーンケアの重要性を啓発する森田さんの原点になったそうですね。日本で受け入れられず、かなりご苦労されたとか?

そうですね(笑)。でも、性科学に出会った当初は、正直私も驚きました。私が学んでいた植物薬理学は、医薬学のカテゴリーに含まれ、薬学を主に勉強します。でも、薬草をなんでも摂取すればよいというわけではなく、受け取る側の体のこともきちんと学ぶ必要がありました。そのための解剖生理学の授業のなかで出会ったのが「性科学」でした。

当時は私も20代の女の子(笑)だったので、性科学の授業を初めて聴講した時は「まじめな大学でなんて卑猥な話を堂々としているのかしら!?」と思っていましたが、勉強するにつれ、なぜそれを学ぶことが重要なのかがよくわかりました。ヒトが健康を維持するうえで、睡眠、運動、栄養だけでは不十分で、つまり、セックスや性器の粘液や快感、性欲といったものが健康に大きく関わっているのです。それは、女性がどんなに年齢を重ねて、おばあちゃんになってからでも、変わりません。

ここ最近ようやく、こういったセクシャリティの大切さを声に出して語れるようになりましたが、10~20年前の日本では、膣や女性の性欲の話をするのはご法度でした。でも本当は、更年期の女性ホルモンを語るずっとずっと前の、小学生や中学生のときから教えておくべきことだったのです。実は、朝日新聞に初めて「膣」という言葉を載せたのは、実は私なのですが、そのときも、それは大問題になりました。また、あるときは、株主の製薬会社の偉い方たちから、「そんなことばかり言っていると、すべてをなくすぞ」と言われました。

でも、批判されたり、叩かれたりしていた時代が長くてよかったな、と今では思っています。あんまり叩かれてばかりいると、いつの間にか怒る神経がなくなってしまうんですよね。怒ったり、悲しんだり、相手を憎む、なんていう無駄な労力を使わなくて済むようになる。

そして、これまでの経験から、信念をもって生きることが大切だと学びました。周囲にどんなに批判されても、自分の中の「これをしたい!」という信念を曲げなければ、いつかきっとまわりの理解を得ることができると思います。

生きづらさの処方箋
Q:母の介護をしていて、このまま将来自分も老いて、介護されるほど何もできなくなっていくのかと思うと暗い気持ちになります。

森田さんからの処方箋フランスの老人ホームで出会った女性たちは、髪も膣も綺麗で、亡くなる2週間前までオムツなんて必要ない方が多いです。80代でも90代でも人権として性が認められている、さすがAmore(愛)の国でした。何歳になってもトキメキをもって生きる大切さを、80代、90代の先輩方に教えてもらったような気がします。女性が笑顔で、幸せでいるためには、食事と睡眠以外にも、セクシュアリティやセンシュアリティ(ワクワクドキドキすること)を大切にすることがとても大事。例えば、尿もれや子宮脱を予防する、骨盤底筋を鍛えることも重要な1つの方法です。女性が元気で綺麗でトキメキをもって人生を生きることで、社会全体も、男性の皆さんも、もっと良い方向に変わっていけるのではと信じています。