第1回 勉強会 『学んでみよう!女性たちのこと。』

2020.10.18
第1回 勉強会 『学んでみよう!女性たちのこと。』
「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」
不衛生な環境のために亡くなる女性たちを救え!
〜ホワイトリボンと妊産婦を守るSafe Motherhood Project〜

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ジョイセフ
サラヤ

この記事は、2020年10月18日(日)に開催した第1回勉強会(Powerd by 日本女性財団&Platform Women JAPAN)の配信内容をもとに再編集・記事化したものです。

最近、日本でも語られるようになってきた「SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=性と生殖に関する健康と権利)」のこと。性や子どもを産むことに関わるすべてにおいて身体的にも精神的にも社会的にも本人の意思が尊重され、自分らしく生きられる権利のことをいいます。SRHRの実現には、一人ひとりの人権が尊重されなくてはいけません。しかし現実は、世界の女性と少女の多くが、性と生殖に関して自らの意思で決めることはできず、必要なケアやサービスを受けにくい状況にあります。

今回の勉強会では、SRHRを普及する活動を行なっている公益財団法人ジョイセフ 市民社会連携グループ長の小野美智代さんと、感染予防の医薬品メーカーであるサラヤ株式会社取締役・代島裕世(だいしま ひろつぐ)様をゲストに迎え、これまで行なってきた妊産婦支援の取り組みや、withコロナ時代の支援のあり方、女性が置かれている現状などについて語っていただきました。

女性の夢・未来を奪う数々の問題、支援活動に終わりはない

――まずは、女性に向けた支援について、どのような活動をされてきたのかをお聞かせください。

ジョイセフ・小野美智代様(以下敬称略)私たちは、1968年に日本で生まれた国際協力NGOです。戦後の日本は、妊産婦の死亡率、新生児の死亡率を劇的に下げた国ということで、特に母子保健や家族計画の分野で高い評価を得ていました。そこで国連や国際機関から要請があり、スタートしたのがジョイセフという団体です。女性のいのちと健康を守るため、アフリカ、アジアの開発途上国、そして日本の被災地などで活動してきました。

最近では、持続可能な開発目標(SDGs)が注目され、SDGSを学びたい、知りたい、何かしたいということで、企業からの問い合わせが増えています。日本は環境やリサイクルに関心が高い企業は多いのですが、ジョイセフが核としている「ジェンダー」や「健康」という「人権」に関わるところはこれから取り組む企業も多いため、情報収集や啓発活動・教育といった面で協力させていただいています。

このコロナ禍で、日本人の健康への意識は大きく変わったと思います。病気になったら病院へ行けばいいではなく、感染しないようにと健康づくりや病気の予防により関心が高まっていると思います。ただ、おろそかになっているのが、女性への支援です。望まない妊娠、家庭内で起こる暴力の問題もありますし、医療従事者の7割が女性というデータもあり、女性の心理的・身体的負担が大きくなっています。まずは、たくさんの方に知っていただく必要があるということで、オンラインでの講演活動などにも力を入れています。「SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=性と生殖に関する健康と権利※)」も重要なテーマ、最近では性教育の講演活動も増えていますね。

サラヤ・代島裕世様(以下敬称略)当社は、衛生・環境・健康という3つのキーワードを事業の柱に、天然素材を用いた人に優しい製品づくりと社会貢献活動に取り組んできました。「ヤシノミ洗剤」や「アルコール手指消毒剤」のメーカーというと、一般の方にはわかりやすいかもしれません。

ご存知のように、新型コロナウイルス感染症拡大により、「アルコール手指消毒剤」の需要が急増しました。2020年3月から工場をフル稼働して医療現場への供給を最優先してきたわけですが、ようやく一般消費者の皆様にも供給できるような体制が戻ってきつつあります。

サラヤは、「社会課題をビジネスで解決する」ということに挑戦する企業でもあります。ヤシノミ洗剤の売り上げの1%は、ボルネオ保全トラストという国際NGOに寄付され、ボルネオ島(東南アジア)の熱帯雨林と生物多様性の回復に使われています。また、2010年にスタートしたのが「100万人の手洗いプロジェクト」。衛生商品の売り上げの1% をユニセフに寄付し、アフリカ・ウガンダで展開する手洗い促進活動を支援しています。開発途上国では、予防可能な感染症などで命を落とす子どもがたくさんいます。子どもたちへの教育や自主的な衛生活動の支援、母親への啓発活動なども大切な活動ですね。こうした寄付つき商品を選んで購入することが、エシカル消費とも呼ばれています。

ホワイトリボンは、女性のいのちを大切にする運動

――ジョイセフさんとサラヤさんは、それぞれ「ホワイトリボン」、「Safe Motherhood Project」という活動で連携されているのでしたね?

代島はい、私は、ジョイセフさんの「ホワイトリボン運動」を通じて、ウガンダの妊産婦が感染症で亡くなるケースが多いことを知りました。

ウガンダは、アフリカの中でも乳幼児死亡率や5歳児未満死亡率が高い国です。サラヤは、もともとユニセフを通じてウガンダの支援を行なっていました。2010年に現地視察をした際に、出産する場所が小屋のようなところで、分娩台には明かりもなく錆びたカミソリがあるだけ、という不衛生な環境に衝撃を受けました。医師がいるクリニックは稀で、助産師が分娩に立ち会うことが多いのです。

また、市内には大きな病院があるものの、アルコール消毒剤をはじめ衛生用品が不足していました。大学には医学部もあって、教育を受けた医療従事者はいるのに、ものがないため院内感染を防ぐことができないんですね。

そこで、当社は日本品質の技術を移転して、アルコール消毒剤を現地製造するということを始めました。2019年になって、ウガンダ工場が単月で黒字になった。ようやく人の役に立ちながら、利益を出せるようになってきたという状況です。現地生産したアルコール消毒剤は、コンゴ民主共和国のエボラ出血熱制圧の際にも使われました。

一方、日本では東日本大震災の後に、スキンケアブランド「ラクトフェリン ラボ」をリリースしました。2018年からは、妊産婦を守る「SARAYA Safe Motherhood Project」を開始。売り上げの一部を寄付し、ジョイセフさんのホワイトリボン運動を通じて、アルコール手指消毒剤を現地のクリニックに届けています。

設備がある程度整った病院内の様子

小野ジョイセフは、ウガンダで、現地NGOのRHU(リプロダクティブ ヘルス オブ ウガンダ)と協働して活動を行っています。女性たちが安心してクリニックで妊婦検診を受け、出産するために、サラヤさんのアルコール手指消毒剤は欠かせないものになっています。

ホワイトリボン運動は、世界の妊産婦の命と健康を守る国際的なアライアンスで、ジョイセフは日本の事務局。白いリボンには、これまで妊娠や出産により亡くなった女性たちへの哀悼の意が込められています。

――新型コロナウイルスは、アフリカでも拡大していきました。支援をするにあたって影響は出ていますか?

小野出ていますね。コロナ以前は、衛生環境の整った施設で女性が健診を受けて、分娩してもらうということが、私たちのミッションでした。自宅分娩が主流だった地域で、やっと施設分娩が可能になってきたのに、コロナ禍で消毒液をはじめ、医療従事者に欠かせないゴーグル、ガウン、マスクすら手に入らないという状況になり、院内感染を抑えるのが難しくなりました。そして結果的に、施設での出産も困難となってしまったのです。

夏ごろから、ジョイセフの職員は立て直しに奔走。現地のスタッフとリモートでつないで、「どうしたら支援を継続できるのか」「安全な出産を確保できるか」を話し合う日々が続きました。私たちは、主に民間企業やODAを資金源として支援を行なっていますが、企業も新型コロナウイルスの影響を受けていて継続支援が厳しいという話も出てきています。ですから、資金調達は直近の重要な課題です。個人の寄付だけではまかなえませんので、企業さんとの連携は、非常に重要になってきます。

代島サラヤは、ホワイトリボン運動を支援して今年(2021年)で10年目になります。生まれた国が違うというだけで、こんなにも女性が置かれた状況が違うのです。今後もこの活動を継続し、スキンケアブランド「ラクトフェリン ラボ」のソーシャルアクティビティとしてメッセージを届けていきたいですね。

社会貢献につながる「エシカル消費」という選択

――「エシカル消費」はまだ新しい言葉。地球環境や人、社会、地域に配慮ながら消費行動をしていくという意味ですが、視点を変えるだけで社会に貢献できるわけです。浸透していくといいですよね。

代島ええ。「買う」という行動を通じて、自分の生活も豊かになり、かつ途上国の支援にも貢献できます。エシカル消費をはじめ「SDGsを実践している女性がエレガント」と言われるような世の中に価値観が変わっていいなと思っています。

エシカル消費を広めるためにも、寄付がついているからといって、製品の性能が悪かったらまったくダメだと思います。ですから感染予防の医薬品メーカーサラヤがつくるスキンケアブランド「ラクトフェリン ラボ」はしっかりした学術成果に基づいた、サイエンスとエレガンスを両立するスキンケアブランドとして開発し世の中に送り出しています。手にとっていただけたら、うれしく思います。

ラクトフェリン ラボ(オールインワン美容ジェルセラム)
ラクトフェリン ラボに配合されている美容成分「ラクトフェリン」は、羊水や母乳に含まれる希少な免疫関与タンパク質。特に母から子へ贈られる初乳に多く含まれています。わたしたちはお母さんのお腹の中でラクトフェリンを含む羊水に守り育まれて来たことに着目。そして大人になった肌にもラクトフェリンを受け取る受容体(レセプター)が存在しているという世界的な大発見を学術発表しました。世界でも注目される独自研究です。生まれたての赤ちゃんのようなキメの整った、潤いとハリを湛えた肌を目指します。

小野プロダクトにホワイトリボンマークをつけて広めてくださり、ありがとうございます。SDGsの目標3は「すべての人に健康と福祉を」ですが、そのターゲットの一番目がホワイトリボン運動が目指す「世界の妊産婦の死亡率の削減」なんですね。私が大好きな言葉に、「自分のために、誰かのために」という言葉があるのですが、まさにこれだと思っています。ぜひ今後も連携していきましょう。

代島はい、ぜひお願いします。当社もSDGsの目標の中で1つだけ選ぶなら「3」です。サラヤが目指す「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」は、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態を意味します。スキンケアも一つの衛生と考えていいと思うのですが、病原体(ウイルス)は通過菌として除菌、殺菌消毒でさっと洗い流せます。でも、常在菌というのは、肌のもう少し奥の方にいて簡単にはいなくなりません。健康に生きていくには、すべての菌をゼロにするのではなくて、共に生きていくという考えが重要なんですね。こうしたサイエンスを伝える努力もしていきたいと思いますね。

小野毎年3月には、国際女性デーがあります。新型コロナの影響で従来のようなイベント開催は難しくなりましたが、オンラインイベントでホワイトリボン運動を広めていけるのではないかと。今年度は、ウガンダと日本をオンラインでつないで、支援先のウガンダからライブ中継し、ともにこの苦境を乗り越えたいと思っています。withコロナをプラスに変えていきたいですね。ぜひお力を貸してください。

包括的人権教育・性教育を日本で広めていきたい

――私たち消費者が求める安い製品の裏側には、途上国の犠牲があるかもしれず、プロダクトの生産背景にある問題にも目を向けていくことが必要ですね。「誰がどこで、どうやって作ったプロダクトなのか」を意識しながら消費していく習慣を持ちたいですね。続いては、「ラクトフェリンラボ」も応援しているという、ジョイセフの取り組み「I LADY.」について、お聞かせいただけますか?

小野I LADY.は、日本と世界の女性たちに「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」を普及する活動を行っています。I LADY.には、「Love yourself」「Act yourself」「Decide youeself」=「自分を大事にする、自分から行動する、自分で自分の人生を決める」というメッセージが込められています。

新型コロナ感染拡大で、アメリカでは人種差別が露呈してきましたが、日本では、若者やセクシュアルマイノリティの自殺が非常に増えています。これにはやはり、人権教育や性教育がおざなりにされてきたことが大きいのではないかと考えているのです。SDGs達成のためにも、誰一人取り残されない支援をすることが大事です。

開発途上国では、性別の違いだけで人身売買にあったり、知識がないことで命を落としてしまったりすることが起きています。ジョイセフは、50年以上、そうした途上国で「自分は何者なのか」「健康に生きる権利は誰にでもある」という、包括的性教育を行なってきました。

一方、日本ではコロナ禍で、2020年4月~6月の中高生の妊娠相談件数が過去最多となったと報じられ、若者に妊娠についての基本的な知識がないことが問題となっています。ジョイセフが途上国でこれまでやってきた人権教育、性教育というものを、日本でも広めていきたいと考えています。

自分のために、誰かのために…。

――ありがとうございました。未来のために、女性のために、日本女性財団(PWJチーム)も、できる限りの協力や支援をしていきたいと考えています。最後に、お二人から読者の方々にメッセージをお願いできますか?

代島働き方も変わって新しいライフスタイルが定着してくると思うのですが、内向きにならず、外を向いて欲しいと思います。これからアフリカはどうなるのだろうかと、世界に思いを巡らしていただくと、全然違う自分のライフスタイルが見えてくると思うんです。決して閉ざさず、目と心を開いて、自分の身の回りにあるものから社会課題を見るだけで十分です。一緒にできることがあったらうれしいですね。

小野現代はたくさんの情報があふれています。不安になったり、自信をなくしてしまったりしている方が多いかもしれません。そんな時代だからこそ「自分のために、誰かのために」という言葉を贈りたいですね。まずは自分を優先して、気持ちいいこと、健康になることを探してほしいと思います。ぐっすり眠れたら、気持ちよく目覚めることができるし、美味しいものを食べたら元気になれますよね。私は、走ることが大好きで、走ると元気になれるんです。一人ひとりが自分のために生きることができれば、未来は明るくなる。そして、誰かのために一歩進むことができると思います。ぜひ自分が健康に、元気になることを見つけて取り組んでいただけたらと思います。

※「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)」とは?
性と生殖に関する健康と権利と訳されます。自分の意思が尊重され、体に関することは自分で決められる権利のことで、以下のことが含まれます。

  • いつ、誰と、結婚するか、それとも結婚しないかを選べること
  • こどもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを自分で決められること
  • 安心して妊娠・出産できること
  • 子供にとって最適な養育ができること
  • ジェンダーに基づく暴力、児童婚、強制婚や、女性性器切除(FGM)などの有害な行為によって傷つけられないこと
  • 強要されることなくセクシュアリティを表現できること
  • 誰もが妊娠・出産、家族計画、性感染症、不妊、疾病の予防・診断・治療などの必要なサービスを必要な時に受けられること

(参考資料:https://www.joicfp.or.jp/jpn/project/advocacy/rh/より)

今回、私たちとつながってくださった女性支援団体・企業・支援者様

女性のいのちと健康を守るために活動している日本生まれの国際協力NGO。戦後の日本が実践してきた家族計画・母子保健の分野での経験やノウハウを途上国に移転してほしいという国際的な要望を受け、1968年に設立。国連、国際機関、現地NGOや地域住民と連携し、アジアやアフリカで、保健分野の人材養成、物資支援、プロジェクトを通して生活向上等の支援を行っている。

I LADY.キャンペーンについて
https://ilady.world

File No.02
サラヤ株式会社様

1952年創業。日本初の薬用石鹸液「シャボネット」を原点とし、日本の衛生環境改善に貢献してきた感染予防の医薬品メーカー。「世界の衛生・環境・健康に貢献する」を掲げ、「ヤシノミ洗剤」「無添加せっけんarau.」「カロリーゼロの自然派甘味料ラカント」など、ソーシャルプロダクツを世に送り出している。SDGsを企業経営に取り入れ、「SARAYA 100万人の手洗いプロジェクト」「病院で手の消毒100%プロジェクト」など世界の衛生環境改善にも積極的に取り組んでいる。

ホワイトリボン支援活動とSARAYA Safe Motherhood Projectについて
https://lactoferrin-lab.jp/csr/